最近、良く頂くご質問の中で、「(自己卵子または卵子提供で)40歳以上の妊娠率はどれくらいですか?」と言うものがあります。
前回も、記事(下記)にしたのですが、この質問は単純に「○○%になります」という回答で片付けることができません。
なぜなら、この確率は着床前診断済の正常胚を移植しているかどうかで大きく数字が変動しますし、様々な条件により妊娠=(イコール)出産とはならないからです。
例えば、2004年から2011年にかけて約1,000人の患者に対して行われた韓国の研究データによると、自己採卵での移植(着床前診断済なし)で出産まで至ったのは40歳で12.9%(流産率31.6%)、42歳で5.4%(流産率50%)、さらに45歳以上になると0.7%(流産率75%)と大幅に確率が下がることが分かります。
それに対し、アメリカの不妊治療クリニックの独自の調査結果では、着床前診断済(PGT-A)を行った上で移植した場合の出産率は41-42歳で72%(58名の患者中)、43-44歳で75%(16名の患者中)と、約7割を維持していることが分かります。
これにより、胚の染色体異常が出産率に大きく影響していることが分かります。
ただし、無事に着床したとしても50歳を超えての出産には、胎児のみならず、母体の危険も伴います。イスラエルにおいて45歳以上で妊娠した女性に対して行われた調査では、50歳以上の妊娠では、49歳以下の妊娠と比べて、多胎児や早産の未熟児で生まれる可能性が最大で2倍近くに上る事が示唆されており、母胎に関しては妊娠中の糖尿病や高血圧などにより出産以前から入院が必要となるケースが63%(49歳未満では22%)に上ったと言う事です。
また、イタリアで行われた閉経後の女性に対する卵子ドナーを利用した移植による研究では、34名の閉経後の患者に対してホルモン療法が行われ、18名が妊娠に至った(胚移植あたりの着床率は約32%)そうで、年齢が高くなればなるほど、母胎と胎児の危険を覚悟の上で、胚移植を何度もチャレンジするつもりで挑む必要があることが分かります。